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January 25, 2008

団塊のJAZZエッセイ「KIND OF BLUE」その149回ーー「篠笛」の巻ー

小春日和の昼下がり、狂紫郎が港区のとある繁華街から少し入った静か住宅街の往還を歩いていた。
今日は背中にソプラノサックスの筒を背負ってはいない、脇差風の西陣織の煌びやかな笛袋だけを腰に差している。
とある、門の脇に姿のいいみこしの松のある日本家屋に入っていった。
狂紫郎は10畳ほどの日本間に正座していた、その向いに座っているのはもう80歳にならんとする村上アヤである。
Mikagura

福原流 篠笛の重鎮である、村上アヤは普通弟子をとらない。
ある日突然、玄関に現われた狂紫郎を見て、一度は断わったが二度目に現われた時に座敷に上げた。
襖戸を開けて部屋に入ると端座とはこのことだと思える姿勢で30分を待ちつづけた。
アヤの試験の一つであった。
続いて、笛を出させ、基音を出させた、唇の当てかた、息の吹き込みに難点があったが、ロングトーンにブレがなかった。基本は習得が終わっている、それを確認してアヤは狂紫郎を弟子にした。

村上アヤは鼓の名人でもあった、篠笛の基本技術を教え、むしろその笛に併せてアヤは鼓を打った。
篠笛と鼓の絶妙な間合いの練習をした、その合間に唇と笛の確度、唇の形などで音色の変化をだす技術をおしえた。
そしてフルートでいうところのタンギングは篠笛では「指打ち」という技術でだす、息の吹き込みと孔を指で叩く、このタイミングでタンギングと同じ効果をだせる。
今日はその練習が主だった。
Sinobue

「唇と笛口の角度がちがいます、右手が下がります」毅然と注意する。
ロングトーンを出しながら、笛の角度と息遣いを変えることでスラーをかけて半音を上下する、指のポジションでの半音だと西洋音階を表現するには良い、しかし、狂紫郎はもっと妖艶で無我の世界の音を表現したかったのだ。

「しかし、エリックはんの音色は七変化ですなぁ」京都なまりが混じった言葉でアヤは思わぬことを口にした。
そう、エリック・ドロフィーのフルートをしっていた。
51wlonziwtl_ss500_

「さあ、稽古は今日はここまで、狂紫郎はんのメロディーを聴かせてください」
狂紫郎は一度背筋を伸ばし、息を静かに吐き出しきった。
「サマータイム」をノーリズムの世界で展開した。
メロディーの美しさを透明感をもった音色で吹ききった、アドリブに入った、ブルーノートやフラット5の音をスラーをかけて半音をずらし表現した。
一瞬、早いパッセージを吹いた、そして最高音へ運ぶとき、息の吹き込みと指打ちで細かいタンギング音を表現した。
音色に独特の煌きが走った。
エンディングは半音ずつ下降させ、7THの音で余韻を残し終わった。
「結構な音色ですなぁ、でも少し怖い音どすなぁ」
「怖い?」
「そう、音の中に殺気みたいな気を感じます」
しばし目を閉じて、「まだか・・」と独り言のようにつぶやいた。

<次回につづく>

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Comments

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Posted by: Zlobwes | November 25, 2017 at 11:20

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Posted by: amukatof | September 27, 2017 at 02:48

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Posted by: amukatof | September 27, 2017 at 02:48

Posted by: findyourkp | September 23, 2017 at 05:37

4438miles さん、こんばんは。

ジャズ無頼帖シリーズも殺気ある真剣勝負になってきたようですね。ジャズの場は、殺気があってこそいいものが生まれるのでしょう。写真のファイブスポットにしても、和気藹々と始まりながらも、ドルフィーとリトルの刺すようなフレーズは緊張感漲るものです。

そうのちオーネット・コールマンがヴァイオリン・ケースを持って現れるのでしょうか。ケースを開けるとピストルが入っていたりして・・・オーネット・コルトマンなんちゃって。

Posted by: duke | January 29, 2008 at 20:15

KAMIさん

まいど!

ナベサダさんにそんなエピソードがあったのですか。

まあ、人前で演奏するというのは、真剣勝負みたいなもので、怖いし、スキは作れないし、ましてや遊びや余興ではできないことですよね。
だって、お金をもらっているのですから。

何でもそうです、額の大小ではなく、お金をもらったらプロですから、責任がありますよね。
最近はどの業界もプロ意識の無い人が目立ちますね。

Posted by: 4438miles(SHIN) | January 28, 2008 at 11:47

4438miles様、こんばんは。
今回の話を読んで、ナベサダが林リリ子にフルートを習った話を思い出しました。
ナベサダは師匠の許可が出る前に、テレビでフルートを吹いてしまい、叱られたと言う話です。
どこまで練習したら、人様の前で演奏して良いのか・・・難問ですね。

Posted by: KAMI | January 25, 2008 at 21:05

「Fのブルース」も「スリーピー 狂紫朗 ジャズ無頼帖」シリーズに入りました。

この荒唐無稽な空想、思いつきのデタラメ話はいつまで続くか!

Posted by: 4438miles(SHIN) | January 25, 2008 at 14:21

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