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January 07, 2008

団塊のJAZZエッセイ「KIND OF BLUE」その145回ーー「新春共演」の巻ー

<明けましておめでとうございます、新春ブログ初めです! 今年も荒唐無稽なお話を宜しく御願いします>

「スリーピー・狂紫朗 新春共演の巻」

長い正月休みも終わり、街にも喧騒が戻ってきた。
「KIND OF BLUE」の音だし初めも今夜からだ。
特にイヴェントを企画する訳ではないが常連はいつものように集まってきた。
正月らしいといえば、振舞い酒の為に菰かぶりの一斗樽が入口に据えられていた。
北海道からはDUKEさん、近隣のKAMIさん、しんじさんに、Basscleffさん、みんなただ酒が飲めるというので早くから出来上がっている。

ハウストリオのメンバーも常連も一合升を片手ににぎやかだ。
「さあ、そろそろゆくか」とリーダーの大野が声を掛けた。
ピアノの河田吾郎がブロックコードを叩いた、ベースの山田と大野がすかさずミディアムスローでバックをつけた、「サテンドール」からの始まりだ。
落ち着いたフレーズで大きくスイングしている、まるで年末に亡くなったピーターソンに捧げているような雰囲気だ。次第に音数が増してくる、密度の高い音でウネリを作り出す、粘っこいスイングに練りあがってくる、そこでテンポが倍になる、ここからは超アップテンポになる切れの良いシングルトーンフレーズが途切れなく続く、2コーラスをアップテンポで進み、二拍三連を二小節続けてもとのテンポに戻った・・・ここで拍手がきた。
一曲目からみなノッテいる。

そんな時、階段を濃い紫色の着流し姿で階段を降りてきたのはスリーピー・狂紫朗だ。
みな、もう前回の登場で彼が何者か分かっている、年末は都内のライブハウスに飛入りして演奏者の度肝を抜いたらしいが、演奏の内容が刺激的ではあるがジャズ以外の何者でもない、むしろ本質をついた音を出すのでその場に居合わせた人たちはかなり喜んだらしい。
但し、いい加減な音で対応した共演者は例によって、円音奏法により金縛りにあい一音も出せなかったと噂が飛んでいた。
彼は一人の連れを伴って入ってきた。
細身の黒人でボルサリーノを目深にかぶり静かな雰囲気をもっていた。

ドラムの大野が声を掛けた、「何かやりますか?」
スリーピーは帯から脇差風の篠笛を袋から取り出した、「彼も一緒にいいか?」と大野に聞いた。
「彼も何かやるのですか?」「うん」それしか言わなかった。

Mikagura

その彼はポケットから小さな楽器を取り出した。
お客が少しざわめいた、「何あれ?」と見慣れない楽器だ。
「もの知りの富田さんがいった、ポケット・トランペットだ!」
スリーピーが吾郎にキーを囁いた、スリーピーの篠笛とポケットトランペットがユニゾンでテーマを吹き出した。「WELL YOU NEED’T」だ。
その男はポケットトランペットにミュートをつけていた。
テンポの間合いがタイトだ、リズムとフレーズの乗りに緩んだ間がない、間あるが100分の1拍すら感じさせる演奏だ。
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ソロは最初はスリーピーがとった、45センチの篠笛でD♭キーがベースになっている。
ロングトーンはあくまで澄んだ音色を震わせ、早いパッセージではキレの良いフレーズを吹いた。
和笛にある音程の不安定さは無い、むしろ吹き込む息つかいが音色にかぶって緊張感を高める。
2コーラスが終わって次にポケットトランペットが登場した。
そのノリはリズムの微妙なタイミングに音を置いてゆくようなフレーズだった。
まるでモンクがペットを吹いたらこんな音のおき方になるのではと思うような、ノリだ。
でも不思議なスイング感をもっているし、フレーズと音色はブルージーだ。
2コーラスが終わってテーマに戻った、スリーピーの篠笛がメロをとりポケット・トランペットがオブリガートを絡めた、そして最終のメロをペットが篠笛を追って最終音でピッタと一致して終わった。
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場内は心地よい緊張から解きほぐされた、そして拍手が起きた。
ゼンさんが皆に紹介した「ドン・チェリー!」
お客が顔を見合わせた、その男がシャイなのだろう、恥ずかしそうに会釈をした。

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そう、ペットのドロフィーとでも言えばよいだろうか、モヒカン刈でカムバックしたロリンズを一層過激にインスパイアーしつづけた「OUR MAN IN JAZZ」での存在はいまだに新鮮であり、凄い。
でも一方においては、シンプルなブルースを温かい音でやさしく吹く男でもある。
ドロフィーはコルトレーンを触発しドン・チェリーはロリンズを触発した。
のみならず、彼は色々なセッションで周囲を煽り、インスパイアーしつづけた、サラ・ボーンは彼とブルースを演奏するのが好きだった。

「KIND OF BLUE」の新春最初の飛入りゲストはドン・チェリーだった。
ゼンさんがスリーピーに話し掛けた「今夜店が終わったら久し振りに母屋で夜食会にでも参加していってよ、他のライブハウスでの出来事も知りたいし・・」
「いいさ、まだ正月気分だ」とスリーピー・狂紫朗が応えた。

<次回に続く>

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Comments

みなさん、今年も、荒唐無稽、いい加減なヨタ話にお付き合いのほど、隅からスミまで、ずずーぃっと、宜しく御願い奉りますぅー!

という訳で、正月早々、ドン・チェリーであります。
或るときは、前衛の斬り込み隊、或るときはブルースペット吹き、・・・或るときはバップフレーズの権化と化し、であってジャズの芯を外さない・・・ドロフィーと同列になるような、不思議な存在です。

この画像は「スーパーセッションⅢ」というVTRから拝借しました。
バックは、ハンコック、カーター、ヒギンス、共演が、サラ、ギャレスピー、マンジョーネ、ファーガソン、アルパート。
1984年、ニューオリンズのストリービルでのライブ録画です。

Posted by: 4438miles(SHIN) | January 09, 2008 at 09:45

 ややっ、始まりましたねぇ。Fという字はなぜか太っ腹で振る舞い酒とは気分最高なのですがこのところめっきり弱くなったようであまり多くは飲めませんよ~~っ。
 ところで「モンクがペットを吹く」ってぇ発想は思ったこともなかったです、言われてみりゃ興味津々、でもなかなか見合うペッターはいない、いやはやとんでもないフレーズを発してくれたもんだ。
 それと「ドロフィーはコルトレーンを触発し」は大いに同感、今に残る共演映像など見ていても音だけでなく表情からもリズムセクションの皆がエリックによりコンセントレーションしているように思えるのは思い込みに過ぎる?
 とにもかくにも、モダーンジャズの大物というか、ほんまもんがずらずらと目白押しってぇのがここの真骨頂でますます目が離せません、今年もよろしくです。

Posted by: 管理人@しんじワールド | January 08, 2008 at 01:50

4438miles様、明けましておめでとうございます。
振る舞い酒、いいですね。いつかこのメンバーで酒を飲みながらジャズを語れたら・・と思っております。
でもmiles様はペリエですね。(笑)

スリーピー・狂紫朗の道場破りは楽しみです。腑抜けなジャズメンには円音奏法で活をいれる・・。
円音奏法で最近蔓延しているインチキジャズメンを退治してほしいと願っております。

今年もFのブルース、楽しみです。

Posted by: KAMI | January 07, 2008 at 22:24

4438miles さん、今年もよろしくお願い致します。

振舞い酒とは嬉しいですね。そろそろ大物が「KIND OF BLUE」に登場するころと思っておりましたが、正月早々、ドンと呼ばれる大物とは驚きました。

ドン・チェリーの傑作「Eternal Rhythm」は、パート1とパート2に別れておりますが、レコードを裏面に反す間に緊張感が途切れたものです。音質の面ではレコードに及ばないCDですが、大きなメリットは途切れなく一気に聴けることでしょうか。CD通して聴いても厭きさせない魅力を持つ Eternal なドンです。

今年は「KIND OF BLUE」に次から次へと大物が現れるようですね。大物に相応しいゲストをこれから探しますよ。ト、アケて待っていてください。(笑)

Posted by: duke | January 07, 2008 at 19:44

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