February 22, 2008
February 08, 2008
団塊のJAZZエッセイ「KIND OF BLUE」その150回ー「スリーピー・狂紫朗・ジャズ無頼帖 オーディオを斬る」の巻ー
おかげさまで、150回を迎えました、そしてご来客数も30000ヒットを越えました。
これも、お閑で酔狂で物好きな皆様のお陰です。
遠くは北海道や沖縄、いや、欧米や豪州から・・・。
相変わらずの校正、推敲なしの書きなぐり、誇大妄想、ウソとホントのミックスジュース。
お知恵、アイディアはいつでも頂きます、アイデイア料はお払いしません。念のため。
批難、中傷、誹謗、絶賛、大歓迎!
では、40000ヒットを目指してまっしぐら!
<前回より続く>
「スリーピー・狂紫朗、ジャズ無頼帖 オーディオ斬り」の巻
狂紫朗は、寒波の押し寄せる黄昏時、中央線沿線のとある駅前を歩いていた。
路地を覗くと「JAZZ」という大文字の看板が目に飛び込んできた。
ふらっと、扉を開けた。
途轍もない音量が耳をつんざく、店内に客は僅かに3人。
狂紫朗は静かに空いていた隅の席についた。
店の主と思わしき人物が愛想も無く、傍に立った、「マティーニ、ドライ・マティーニ」と耳元で繰り返した。主は首をかしげながら、遠ざかった。

店内にはセロニアス・モンク「ミステリーオソ」が流れている、ジョニー・グリフィンの金属音テナーの後ろでコードを叩くモンクの姿が浮かぶ。
しかし、いかにせん、音量が大きすぎる、本物の音より大きい。
オーディオには疎い狂紫朗にもスピーカーがJBLパラゴンであることくらいはわかった。
その時、マティーニが机の上に無言で置かれた。
一口マティーニを舐めた、甘い・・・味にシマリがない、この音と同じだ。
たしか、ドライと言葉を加えたはずなのにと思った。
店内はジャズ喫茶特有のレイアウトで、典型的な配置、椅子はみなスピーカーに対座している。
アルバムが変わった、「スリー ブラインド マイス」、ジミー・メリットのベースのイントロが始まり、シダー・ウオルトンが加わり、ブレイキーがレガートを付け始めた。
三管編成のテーマが始まった・・・しかし何だこの音は、実際より音量が大きいだけではない、音質が違う、実際にコンサートで同じ編成を生で聴いたことがある狂紫朗は「ちがう!」と声を出した。
主と思わしき人が近づいてきた、「お客さん、お静かに」
「こんな音が静かに聴けるか」
他の三人の客が振り向いた。
ウエイン・ショーターがソロを取っている・・・しかし、ショーターの音色ではない。

「うちのオーディオは都内でも有名な装置だ、この音に文句つける奴は初めてだ!」
主が息巻いている。
「どうだ、このクリアーさ、低音の伸び、最高音だって割れずにシッカリと伸びているだろう、シッカリ聴け」
「しかし、ショーターの音色はこんなに角ばっちゃいない、もっと角の丸い音色だ、それにこのマウスピースはまるでメタルマウスピースの音だな、この時はショーターはハードラバーだと思うが・・・・」
「なにお、聞いたようなことをいいやがって、俺の店にケチつけにきたのか、代金は要らないから、さっさと帰ってくれ」
「いや、帰りたいのはこっちの方だが、この音が本物だと思って聴いているお客さんが気の毒だな」
「ショーターの本物の音って?」とお客が声を張り上げた。
「もっと太い、低音がバリバリとくる音だ」
「なにお、この当時の本物の音が何だか知っているのか、エッー、分かってない奴はこれだから困る」と主が言う。
「この同じ編成で来日したとき、私は最前列で聴いている、1963年の時だ、曲も同じものを聴いている」
ソロがハーバートに変わった。ブレイキーが煽る、ハーバートの高音がヒットした。
「ハーバートの音はもっと輝きをもっているな」
「・・・・・」主は無言になった。
「なら、どんな音が本物の音だというんだ」
それから暫く、音を少し落とせとか、低音にシャを被せてとか、スピーカーの中に人がいるみたいだ、もっと距離感をだせとか・・・30分ほど続いた。
「少しはましになったな」
「しかし、これでは音がボケて聴こえないかな・・」と主。
「ピアノトリオでも聴いてみろ、一目瞭然だ!」
アルバムがピーターソンに変わった。
「ナイト トレーン」だ。

お客の一人が思わず「ああ、ピアノがそこにあるみたいだ、ベースもドラムもしっかりと識別して聴こえる」
主が不思議な顔をして聴いている。
「どうだ、ピアノの中に頭を入れて聴く客はいないだろう、これがピアノから数メーター離れて聴く音だ」
「では・・・本物の音より良い音など無い」
主が気がつくと、不思議な風体の男の姿はなく、テーブルの上に1万円札が一枚とメモが置いてあった。
メモには「ハンク・モブレイを聴け」と・・・。
<続く>




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